五反田敗北の女相撲オリジナル小説『土俵の火花 ―里江と珠里―』第3話

五反田敗北の女相撲オリジナル小説『土俵の火花 ―里江と珠里―』 2人の土俵の上でのキャットファイト!!結末はいかに!?熱い取り組みを是非ご一読下さい!今回最終回です。

『土俵の火花 ―里江と珠里―』第3話

大会前、最後の合同稽古。
土俵の空気は、張りつめていた。

周囲には何人かの関係者がいるが、
里江と珠里の間には、まるで二人だけの世界ができている。

向かい合う視線。
どちらも、もう迷っていない。

「……今日は、絶対に勝つよ」

珠里がそう言うと、里江はゆっくりとうなずいた。

「私も負けない」

はっけよい。

ぶつかった瞬間、これまでとは音が違った。
重く、鋭く、覚悟がぶつかる音。

珠里は最初から前に出た。
逃げない。引かない。
里江の胸に正面から当たり、腕を深く差し込む。

「……来たね」

里江の声は低く、楽しそうですらあった。

組み合い、押し合い、足が土俵を削る。
互いの呼吸が乱れ、汗が流れる。

珠里は必死だった。
今日は違う。

一瞬の隙を突き、体を入れ替える。
里江のバランスが、わずかに崩れた。

「っ……!」

初めて聞く、里江の短い息。

「今だ!」

珠里は全力で押し込む。
土俵際。あと一歩。

だが

里江は踏みとどまった。
腰を落とし、珠里の力を受け止め、逆に体を預ける。

二人は、崩れたまま倒れ込んだ。

同時だった。

行司の声が止まり、
会場がざわつく。

――引き分け。

土俵の上で、二人はしばらく動かなかった。
荒い呼吸だけが、はっきりと聞こえる。

「……届いた?」

珠里が、仰向けのまま聞く。

里江は天井を見つめ、静かに答えた。

「うん。もう、同じ場所にいる」

その言葉に、珠里は思わず笑った。

「じゃあ……次は?」

里江も、ゆっくりと笑う。

「次は、勝ち負けじゃないかもね」

二人は同時に起き上がり、
自然に向かい合って礼をした。

土俵の中央に残ったのは、
勝者でも敗者でもない、
確かな火花だけだった。